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ミックスとマスタリングの違いはどこにある?工程ごとの役割と頼み方をわかりやすく解説

音作りの工程は混同されがちですが、ミックスとマスタリングは役割がはっきり分かれています。ミックスは個々のトラックを磨き上げて曲の骨組みを作る工程で、バランスや空間、音色の調整が中心です。一方マスタリングは完成したステレオ音源を最終調整して、配信や再生環境で安定して聴こえるように仕上げる工程です。この違いを理解すれば、どのタイミングで誰に頼むべきか、どこを自分で対応すべきかが見えてきます。

目次

ミックスとマスタリングの違いをすぐに理解する

工程ごとの狙いを比較

ミックスは曲の各パートを整理して楽曲全体のバランスを取ることが狙いです。ボーカル、楽器、リズムなどの音量や定位(パン)、音色を整え、聞きやすく感情が伝わる状態にします。各トラック単位でEQやコンプレッサー、空間系を使い分けます。

一方マスタリングはステレオにまとめられた完成音源を対象に、曲の一体感や再生環境での安定感を高めることが目的です。楽曲全体の音量感や周波数バランスを微調整して、アルバム内での音量差を揃えたり、配信基準に合わせたりします。言い換えると、ミックスが「パーツを整える作業」なら、マスタリングは「完成品を磨き上げる作業」です。

工程の順序は必ずミックス→マスタリングです。ミックスがしっかりしていないとマスタリングでできることは限られます。逆にミックスの段階で無理に全体の大音量を作ろうとすると、あとで修正が難しくなります。両方の役割を理解して適切に分担することが重要です。

担当者や依頼先の違い

ミックスは曲ごとに担当エンジニアが細かく介入することが多い工程です。アレンジや演奏のクセを踏まえてトラック単位で作業するため、曲の意図やアーティストの好みに深く関わる必要があります。そのため、プロジェクトによってはバンドのメンバーや制作チーム内のエンジニアが行うことも多いです。

マスタリングはステレオ音源を対象にするため、曲単位だけでなくアルバム全体の整合性を考える立場で行われます。マスタリング専業のエンジニアは、音響処理の視点と多様な再生環境での経験を持っていることが多いです。機材やモニタリング環境、リファレンスの蓄積が仕事の質に直結します。

依頼先を選ぶ際は、目的や予算、求めるクオリティで使い分けるとよいです。短納期で安価に済ませたい場合はミックスもマスタリングも同じエンジニアに頼むケースもありますが、それぞれ専門家に任せると仕上がりが安定します。コミュニケーションを密にして、イメージ共有をしておくことが大切です。

調整できる音の範囲が違う

ミックス段階では個別トラックの音量、EQ、ダイナミクス、定位、エフェクト量など広範囲に手を入れられます。たとえばギターだけにEQをかけたり、特定の周波数でボーカルを持ち上げるなど、パートごとの調整が可能です。これにより楽曲の構造や聴かせたい部分を直接作り込めます。

対してマスタリングでは、ステレオ音源全体に対して処理を施します。個別トラックに戻って元の録り直しや細かな修正はできないため、ミックスで解決すべき問題が残っていると限界があります。マスタリングで行う処理は全体のEQ、マルチバンドコンプレッサー、リミッター、ステレオイメージャーなどに限定され、目的は音の統一感や再生の安定化です。

そのため、ミックスで細かく問題を潰すことが品質向上の鍵になります。マスタリングで過剰に補正しようとすると不自然になりやすいので注意が必要です。

納品データの違い

ミックスの納品物は通常、ステレオのWAV/AIFFファイルのほか、マルチトラックのセッションや各トラックのステム(ステレオにまとめたグループ)を求める場合があります。これにより後からの再調整やリミックス、マスタリングでの柔軟性が高まります。サンプルレートやビット深度、フェードの取り扱いなど細かな指定があることが多いです。

マスタリングの納品は最終的な配信用ファイルやCD用のマスターが中心になります。通常はラウドネス基準に合わせたデータ、トラック間のゲイン調整やISRC/PQ情報が埋め込まれたファイルが納品されます。配信先ごとのバージョン(ストリーミング用、CD用、YouTube用など)を用意することも一般的です。

納品形式やメタデータの要件を事前に確認しておくと、納品後の手戻りやトラブルを避けられます。

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ミックスで行う主な作業と狙い

音量とパンでパートを整える

ミックスの最初の作業は音量バランスとパン(ステレオ配置)です。ボーカルやキック、スネアなどの主要パートを基準にして、他のパートを相対的に配置していきます。これで曲の基礎的な聞こえ方が決まります。

パンを使って左右に音を振ると、各パートがぶつからずに整理されます。中央に集めるものと左右に広げるものを意図的に分けると、空間の奥行きが生まれます。音量調整は感情の伝わり方にも影響するため、サビやAメロでの差を意識してフェーダーを操作します。

意図的に小さな音を残したり、逆に聴かせたい部分を持ち上げたりすることで、曲の流れが自然に感じられるようになります。作業は繰り返し聴きながら少しずつ詰めていくことが大事です。

イコライザーで帯域を整理する

EQは各トラックの周波数を整えて、音同士がぶつからないようにするために使います。低域のもたつきをカットしたり、中域の張りを調整したり、高域の抜けを作ったりと、目的に応じた処理を行います。

まずは問題となる周波数を削ることから始めると全体がスッキリします。次に必要な帯域をブーストして楽器の個性を強調します。過剰な補正は音を不自然にするので、少しずつ行うことがポイントです。

EQは視覚的なスペクトラム表示と耳での確認を併用すると分かりやすくなります。曲のジャンルや編成によって処理の仕方は変わるので、基準となるリファレンス曲を持っておくと迷いが減ります。

コンプレッサーでダイナミクスを制御する

コンプレッサーは音の強弱を整えるための重要なツールです。ボーカルの音量のばらつきを抑えたり、ドラムのアタック感を出したりするのに使います。設定次第で曲のタイトさやアタック感、持続感をコントロールできます。

使い方の基本は、どの音を目立たせたいかを考えてスレッショルドやレシオを決めることです。スレッショルドを低くしてかけすぎると潰れた音になりやすいので、目的に合わせて短時間で試してみてください。オートメーションと組み合わせると、部分的に強調したり緩めたりできます。

マルチバンドコンプレッションを使うと特定の周波数だけを抑えることができ、全体のバランスを壊さずに調整ができます。いずれも耳での判断を最優先してください。

リバーブやディレイで空間を作る

リバーブやディレイは音に奥行きや広がりを与えるためのエフェクトです。リバーブで部屋の反響を作り、ディレイでリズムの余韻やステレオ感を補強します。設定次第で近いライブ感から大きなホール感まで変えられます。

重要なのは使いすぎに注意することです。過度なリバーブは音をぼかしてしまい、歌詞の聴き取りが悪くなることがあります。センド/リターン方式でまとめて処理すると、全体の統一感が出ますし、リバーブの種類をパートごとに分けると整理しやすくなります。

短いプレートリバーブでボーカルを前に出し、長めのホール系で楽器に奥行きを与えるなど、役割を分けて使うと効果的です。

リファレンス曲と比べながら調整する

リファレンス曲を用いると目指す音像が明確になります。ジャンルや制作意図に近い曲を選び、周波数バランスや音圧感、ステレオイメージを比較しながら作業するとブレが少なくなります。

ただし、リファレンスに忠実になりすぎると個性が失われることがあるため、自分の曲の魅力を活かす範囲で参考にするのが良いでしょう。音量レベルは合わせて比較し、節目ごとにチェックして調整を繰り返してください。

比較する際は同一のリスニング環境で聞くこと、モニターレベルを一定にすることを心がけると正確な判断ができます。

マスタリングで行う処理と仕事の流れ

曲全体の音量と密度を整える

マスタリングではまず楽曲全体の音量感と「密度」を整えます。リミッターやマキシマイザーでラウドネスを調整しつつ、音の詰まり具合や余裕を保ちます。目的は再生環境での存在感を確保しつつ、音のつぶれを避けることです。

過度にラウドネスを追い求めると瞬間的なダイナミクスが失われるため、曲の性格に合わせた調整が求められます。段階的に処理を重ねて、最終的なリミッティングで目標レベルに到達させます。

また、聴感上の厚みを作るためにマルチバンド・プロセッシングを使い、低域や中域、高域の密度感をコントロールします。微細な変化が全体の印象を大きく左右するため、少しずつ確認しながら進めます。

全体の周波数バランスを微調整する

マスタリングではEQで全体の周波数バランスを微調整します。ミックスで残ったクセや偏りを補正し、リスナーにとって自然な聞こえ方に整えます。極端な処理は避け、少しのカーブで大きな改善を目指します。

低域の膨らみや高域の刺さりを抑えると、様々な再生機器での再現性が良くなります。時にはサチュレーションやハーモニクスを加えて存在感を補う手法も使いますが、やり過ぎないことが重要です。

リファレンス曲と比較しながら、複数のスピーカーやヘッドフォンでチェックしてから最終調整を行ってください。

ステレオイメージを細かく調整する

ステレオイメージの調整は、曲の広がりや定位感を最終的に整える工程です。ステレオ幅を広げすぎるとモノラル再生で問題が出るため、中央のフォーカスは保ちつつサイド成分を調整します。

ミッド/サイド処理を使って中央とサイドで個別にEQやコンプレッションを掛けると、ボーカルの存在感を損なわずに広がりを持たせられます。リスニング環境による違いも確認し、自然に聞こえるバランスを探してください。

モノラルチェックを必ず行い、相互位相の問題がないかを確認することが大切です。

フォーマットや配信先に合わせて出力する

マスタリングでは配信先や納品形式に合わせたファイル作成が必要です。CD用の44.1kHz/16bit、配信向けの24bitファイル、さらにストリーミング用に音量を合わせたバージョンなどを用意します。

規格に応じてトラック間のギャップやメタデータ、ISRCコードなどの埋め込みも行います。配信プラットフォームごとに推奨フォーマットやラウドネス基準が異なるため、それに合わせた書き出しが求められます。

事前にどの配信先を想定するか共有しておくと、トラブルを防げます。

配信ごとのラウドネス基準に合わせる

各ストリーミングサービスは独自のラウドネス基準を持っています。マスタリングではその基準に合わせて曲のラウドネスを調整し、プラットフォーム側での自動正規化による音量変化を最小限にします。

ターゲットLUFSを設定してリミッターやトラックゲインを調整すると、曲が過度に抑えられたり逆に歪んだりするのを防げます。複数の配信先を想定する場合は、それぞれに最適化したバージョンを用意すると安心です。

どの段階で誰に頼むかと注意すべき点

分けて作業する利点

ミックスとマスタリングを別々の工程として依頼すると、各工程に専念できるメリットがあります。ミックスはトラック単位の細かな調整に集中でき、マスタリングは最終的な音質の均一化や配信適合に特化できます。

第三者の耳で最終チェックをされることで、ミックス時に見落とした問題が発見されやすくなります。また、専門のマスタリングエンジニアは再生環境や経験に基づく調整が可能で、曲全体の仕上がりを高めてくれます。

別プロジェクトで作るときの手順

ミックスとマスタリングを別プロジェクトで行う場合は、まずミックスを確定してステムやステレオWAVを用意します。フェードやクリップ、過度のリミッティングを避け、なるべく余裕を持たせた状態で渡すことが重要です。

次にマスタリング用の指示(ターゲット音量、参考曲、配信先)を添えてエンジニアに渡します。やり取りは明確に行い、必要なら修正の範囲や回数を事前に取り決めておくとスムーズです。

自分でやるか外注するかの判断基準

予算や時間、求めるクオリティで判断します。限られた予算なら自分で両方行う選択もありますが、それぞれの工程で必要なスキルとモニタリング環境を揃える必要があります。専門家に頼むと短時間で安定した結果が得られる反面、コストがかかります。

自分で行う場合は、適切なリファレンスと客観的に聴ける環境を用意し、段階的に学びながら進めるのが現実的です。

よくある失敗と簡単な直し方

よくある失敗は低域のモコモコ、高域の刺さり、ボーカルの埋もれなどです。低域はハイパスで不要な下限を切る、ボーカルは周波数でマスクしている楽器を軽く削る、刺さる高域はシェルビングで抑えると改善します。

ミックス段階でクリッピングしている場合は元トラックに戻してゲイン構成を整える必要があります。マスタリング段階で修正が難しい問題は早めに対処しましょう。

費用と納期のおおよその目安

費用は求めるクオリティとエンジニアの経験で大きく変わります。個人エンジニアならミックスは数千円〜数万円、マスタリングは数千円〜数万円が一般的です。プロのスタジオや著名エンジニアだとさらに高額になります。

納期はシンプルな曲なら数日〜1週間、複雑な案件やアルバムだと数週間から1か月以上かかることもあります。相談時にスケジュールと修正回数を確認しておくと安心です。

ミックスとマスタリングの違いを押さえるまとめ

ミックスは各トラックを整えて曲の骨格を作る工程、マスタリングはその完成音源を最終的に磨いて配信や再生環境で安定させる工程です。両者の役割を分けて考えることで、適切な依頼先や作業の進め方が見えてきます。どちらも耳での判断が重要なので、リファレンスを持ちつつ複数の環境でチェックする習慣をつけるとよいでしょう。

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この記事を書いた人

4歳でピアノを始め、大学ではキーボード担当としてバンド活動に没頭。社会人バンドも経験し、長年「音を楽しむ」スタンスで音楽と向き合ってきました。これから楽器を始めたい人や、バンドに挑戦してみたい人に向けて、音楽の楽しさを発信しています。

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